2025年3月10日、イーブルなごやにて開催された講演会「能動的サイバー防御法とは」において、中谷雄二弁護士が本法案の問題点について講演を行いました。
・2025.03.10 学習会「能動的サイバー防御法」とは(動画)
・配付資料
・文字起こし
政府はサイバー攻撃に対応するためとして25/2/7に「能動的サイバー防御法案」を国会に提出しました。
しかしながら、日弁連は通信の秘密の観点や、緊急避難法理により違法性が阻却され得るのかという視点から、25/2/19に「重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律案(いわゆる「能動的サイバー防御」法案)に関する会長声明」を出しました。
今回、「憲法をくらしと政治にいかす 改憲NO!あいち総がかり行動」が学習会を企画しました。
はじめに、NPO法人 情報公開市民センターの内田隆が、「サーバーとは何か」「サーバーとサイバーの違い」を説明しました。
その後の中谷弁護士の講演の内容を整理し、その要点を以下まとめました。
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中谷雄二弁護士の講演「能動的サイバー防御法とは」では、まず能動的サイバー防御法案の基本的な概念について説明がなされた。本法案における「サイバー防御」とは、政府の定義によれば、インターネットを通じた攻撃や情報の窃取などのサイバー攻撃から国民を守ることを指す。一方、「能動的サイバー防御」は、攻撃の脅威を探索し、攻撃の可能性があると判断した場合に、攻撃元に対して先制的に無力化措置を講じることを意味する。しかしながら、中谷氏はこの「能動的サイバー防御」という言葉自体が矛盾を孕んでいると指摘し、本質的には「サイバー攻撃」と呼ぶべきであるとの見解を示した。
本法案の最大の特徴は、実際にサイバー攻撃を受けた場合ではなく、「攻撃の危険性がある」と判断された段階で、攻撃元とされる対象に対して無力化措置を行う点にある。その手段として、攻撃を仕掛けてくる可能性のあるコンピュータの停止、ソフトウェアの無効化、あるいは妨害プログラムの送信などが想定されている。しかし、先制攻撃を行うという特性上、誤認のリスクが伴うことは避けられず、誤って無関係なシステムに対して攻撃を加える可能性もある。この点について、中谷氏は、サイバー攻撃を受けた側がこれを主権侵害や武力攻撃と捉え、反撃に出るリスクを指摘し、本法案が国際的な緊張を高める要因になりかねないと警鐘を鳴らした。
また、本法案の中核となる要素として「官民連携」と「通信情報の利用」が挙げられる。官民連携に関しては、政府が民間企業と協力し、企業が持つ膨大な経済情報やサイバー関連データを政府の管理下に置くことが想定されている。すでに鉄道、航空、金融、電気、ガス、水道、放送などの53社213事業所が政府との契約を締結しており、これらの企業の情報が政府に提供される仕組みが進行している。しかし、企業秘密を含む情報が政府によって強権的に吸い上げられる危険性があり、結果として官僚による経済統制に繋がる可能性があると中谷氏は指摘した。
通信情報の利用については、基幹インフラ事業者との協定を通じて情報を取得することが定められているが、問題は「同意によらず情報を取得する場合」の規定にある。本法案では、国民の生命や財産に危険が及ぶ場合には、事前の同意なしに情報を取得することが可能であり、事後承認も認められている。しかし、事後承認の詳細なプロセスや監視体制が不透明であり、第三者機関の承認を受けた後でさえ、単なる「通知」にとどまる可能性があることから、恣意的な運用の危険性が指摘されている。
本法案の運用においては、取得した情報を機械的に収集し、不必要なデータは除外するという建前になっている。しかし、サイバー攻撃の特性上、単に発信元や通信ログを確認するだけでは攻撃の脅威を判断することは難しく、最終的には内容を精査する必要が生じると考えられる。中谷氏は、この点に関してドイツの例を挙げ、同様の法律がドイツ憲法裁判所で違憲と判断されたことを紹介した。ドイツでは、国家が立ち入ってはならない「私的領域」が厳格に定められており、本法案のような個人情報の無制限な取得は違憲とされる可能性が高いと述べた。
日本の警察法の運用についても、中谷氏は問題を提起した。例えば、警察がDNA情報を収集し、それを「不要なものは廃棄する」と説明しているものの、実際には内部規則で運用されているに過ぎず、法律で厳格に管理されているわけではない。このようなずさんな情報管理のもとで、能動的サイバー防御が運用される場合、情報の恣意的な利用や市民のプライバシー侵害の危険性が極めて高いと指摘した。
総じて中谷氏は、本法案が国民の自由やプライバシーを脅かす要素を多く含んでいること、また、サイバー攻撃の防御を名目としながらも先制攻撃を合法化する点において、国際的な緊張を高める可能性があることを強調した。今後、本法案の審議が進む中で、これらの問題点が十分に議論されることは極めて重要であるが、日本の国会ではこのような本質的な議論が深まらない可能性が高いとし、慎重な検討を求めた。
中谷弁護士は、市民が法律を学び、監視社会の進行を防ぐ必要があると強く訴えた。今後、能動的サイバー防御法に対する慎重な議論と、警察活動に適切な歯止めをかける立法措置が求められるとした。
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質疑応答では、会場から活発な質問がありました。
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・秘密法と共謀罪に反対する愛知の会 能動的サイバー防御法ページ
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