愛知県弁護士会は25/3/1に学習会「プライバシーがあぶない!能動的サイバー防御法案」を行い、約40名が参加しました。
・配付資料
オンラインバンキングやネットショッピング、SNSの利用など、今やインターネットがなくてはならない生活になっています。
非常に便利な一方で、個人情報の流出やサイバー攻撃といった、危険と隣り合わせになっています。
政府はこうしたサイバー攻撃に対応するためとして25/2/7に「能動的サイバー防御法案」を国会に提出しました。
しかしながら、日弁連は通信の秘密の観点や、緊急避難法理により違法性が阻却され得るのかという視点から、25/2/19に「重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律案(いわゆる「能動的サイバー防御」法案)に関する会長声明」を出しました。
「あなたのプライバシーが政府に監視されるかもしれない──」
「銀行のパスワード、SNSのやりとり……そのすべてが政府に知られる可能性が?」
「外国のサーバーに無断で侵入することは主権侵害にあたるのでは?」
愛知県弁護士会が、この法案の問題点について学習会を開催しました。
元日本弁護士連合会担当副会長の齋藤裕弁護士(新潟県弁護士会)は、24/11/29に「サイバー安全保障分野での対応能力の向上に向けた有識者会議」が出した「サイバー安全保障分野での対応能力の向上に向けた提言」を元に、本法律案の概要と問題点を述べました。
・サイバー安全保障分野での対応能力の向上に向けた提言 概要
法案の目的とは?
この講演では、サイバー安全保障に関する新たな法律の必要性やその内容について詳しく説明されました。講演の中で、まずサイバー攻撃の脅威が増している現状について述べられ、特に海外からの攻撃が多いことが指摘されました。
警察庁の統計によると、99%以上のサイバー攻撃が海外から発信されていると言われ、特に機微情報の窃取や重要インフラへの侵入が懸念されています。
この新たな法案の目的は、官民連携を強化し、通信情報の利用とアクセスの無害化措置を講じることです。
一つ目の官民連携では、政府と民間の情報流通を促進することが重要とされます。
二つ目の通信情報の利用については、政府が通信情報を取得できるようにするものです。
通信情報の利用は以下4つに分けられます。
1 外外 海底ケーブルで日本を経由する
2 外内 外国から日本へ
3 内外 日本から外国へ
4 当事者協定
三つ目は、悪意のあるサーバーに対して指令を出し、無害化措置を取ることです。
なぜ問題なのか?
齋藤弁護士は「この法案の最大の問題点は能動的サーバー攻撃と通信情報の利用だ」と述べました。
特に「当事者協定」をインフラ事業者と政府が結べば、国民の知らないところで政府が国民の通信情報を得ることが可能となります。
この法案が通れば、政府があなたの通信を自由に監視できるようになるかもしれません。
また外国のサーバーに侵入して「無害化措置」を取ることは、各国主権の侵害になるおそれがあり、国際法学者が作成した「タリン・マニュアル2」にも反しています。
この法案には多くの議論がありますが、一つの側面に焦点を当てすぎると物事の本質を見失う危険性があります。さらに、有識者会議の提言には70くらいのサイバー防御策が含まれていましたが、能動的サイバー防御法案は20-30くらいしかとりいれておらず、しかも憲法・国際法にも反するおそれがある能動的サーバー攻撃・通信情報の利用が入れられていると述べました。
特に、法律にはまだ取り入れられていない有効な対策が数多く存在し、他の方法を優先するべきとの意見も提起されました。
その後、法案提案の内容について詳しい説明が続き、基幹インフラ事業者と政府との報告義務や協議会の設置について話されました。事故が発生した場合には、事業者が政府に報告する義務があり、その理由は事故情報が外部に漏れないようにするためでもあります。これにより、事業者が報告しやすくする環境が整えられます。
講演の後半では、法案による通信情報の利用が憲法的な問題を引き起こす可能性が高いことや、憲法の令状主義への違反についても触れています。また、無害化措置の適法性に関する懸念も表明され、緊急避難が必要な状況とは言えないケースが想定されることが示されました。例えば、将来的に発生する可能性のあるリスクを理由に無害化措置を行うことが可能になると、これは緊急性を欠くとされています。
結局、サイバー防御は必要であるとしつつも、法案が全体の中で位置付けられ、より包括的で合法的な対策が必要との意見がまとめられました。また、法案が進む流れに関する展望として、国民民主党や自民党、公明党の立ち位置が言及されており、特に立憲民主党の反応が今後の議論の鍵になることが強調されました。
最後に、講演者は今回の法案についての意見や周囲の働きかけが重要であると訴え、参加者に行動を促し、講演を締めくくりました。
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その後、愛知県弁護士会所属の新海聡弁護士、加藤光宏弁護士と対談し、本法案の問題点が数多く指摘されました。
齋藤弁護士は「強盗はどんな行動パターンを取るか知り、防御すれば防げる。サイバー防御も同様だ。
政府は通信情報の利用は『機械的に選別する』といっているが、はたして第三者機関がチェックできるのか。
また、当事者協定で得た情報は、犯罪捜査に使うのも自由となっている。市民運動の弾圧にも使いうるだろう。
まずはサイバーセキュリティーの人材を育成するところからはじめる必要がある」と述べました。
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私たちにできること
あなたのプライバシーを守るために、まずはこの法案を知ることから始めませんか?
日弁連の意見書を読んで、あなたの意見を政治家に届けましょう!
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・秘密法と共謀罪に反対する愛知の会 能動的サイバー防御法ページ