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特定秘密保護法に反対するため、弁護士や市民が「秘密法と共謀罪に反対する愛知の会」を結成しました。各地のイベント、最新ニュースも載せます。集団的自衛権にも反対です。https://www.facebook.com/nohimityu


by beshi50
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愛敬教授「『鈍痛のプライバシー』こそ市民社会にとって重要だ」動画

秘密法と共謀罪に反対する愛知の会は、22/5/30にオンライン講演会「市民の政治的表現の自由が市民社会を守る」~大垣警察市民監視違憲訴訟1審判決を題材に~ を開催し、約90名が事前申込しました。
講師の許可を得て、youtubeにアップしました。


愛敬教授「『鈍痛のプライバシー』こそ市民社会にとって重要だ」動画_c0241022_12142291.png
・引き続きのご支援をお願いいたします。
 郵便振替口座 00840-3-214850
 ゆうちょ銀行 当座 〇八九店 214850
 秘密法と共謀罪に反対する愛知の会
・新規会員募集中です。

講師の愛敬浩二・早稲田大学法学部教授(憲法学)の講演を、事務局の内田隆が簡単に以下まとめました。
・当日配付資料
 http://www.nagoya.ombudsman.jp/himitsu/220530-1.pdf
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愛敬教授「『鈍痛のプライバシー』こそ市民社会にとって重要だ」

近年「市民社会」概念が見直されており、選挙・国民投票で示された「民意」とは違う民意を重視しようとなってきている。
現在、市民社会はかなり危機的な状況になってきており、暴力で議会を占拠したアメリカだけでなく、日本でも同様である。
市民社会にとって、「政府にとって望ましくない発言をする人」を守ることで、社会全体の健康さが保たれる。

日本では、捜査機関等による「市民社会」への攻撃が相次いでおり、大垣警察市民監視事件は孤立した事件ではない。
2017/3/15に最高裁は「GPS捜査にも原則令状が必要」と判決を出したが、いまだに立法化がされていない。
DNA型鑑定にも法制化が必要になるからではないかと私は考えている。

今回の大垣警察市民監視事件は2014/7/24朝日新聞スクープで発覚した。
大垣警察は、風力発電設置を計画していた民間企業「シーテック」に、学習会をはじめた反対派住民や地域の環境運動家の個人情報やプライバシー情報を提供していたことが明らかになった。

大垣警察とシーテックの情報交換の議事録を入手したが、内容が馬鹿馬鹿しいもので、床屋談義レベル。
シーテックは「警察が勝手に教えてくれた」としている。
本来、病歴や政治的信条はセンシティブであるべきだ。

本件訴訟をはじめるにあたり、憲法学者として弁護団と意見交換した。
捜査機関による情報の収集・管理・利用について、以下私は述べた。
(a)利用(第三者への提供)は裁判所も違法とするだろう
(b)収集・管理は違法と判断する可能性は低いだろう
原告や弁護団から、(b)も違法とするためどうすればよいかと問われ、先端的プライバシー権を踏まえて憲法論を提示した。

そもそも古典的プライバシーの理解は、思想や信条や病歴など、「私事をみだりに公開されない自由」だった。
それを公開されると「激痛」を受ける。
しかし、名前、住所、メール、電話番号など「プライバシー外延情報」や自己情報コントロール権(本人の承諾無しの第三者への提供は違法)にも理解が広がってきた。
それらは公開されると「鈍痛」を受ける。

一方、データベース社会に伴い、様々な情報が容易に結合されてしまうため、「プライバシー外延情報」がより保護の必要性に迫られてきた。
また、「警察に監視されている」と人々が知れば、話しを避ける人も出てきて市民社会の存続が危機的になるおそれもある。
さらに、たとえ「プライバシー外延情報」が外部に公開されなくても、警察等内部でどのように「収集・管理」されているかわからないとなると「鈍痛」を受ける。

それには、法律の根拠がない「収集・管理」は違法だとして立法措置をとることと、捜査機関の情報収集には「同意要件」を置くことができないため、第三者機関を設置し、不要な情報収集されていないか監視し、定期的に廃棄するしかない。

結局、岐阜地裁判決は予想通り
(a)利用(第三者への提供)は違法 
(b)収集・管理は違法でない
とした。
判決は、事実認定はとてもよい。
「市民運動への関わり等」までプライバシー権と認めた。
(a)「警察が提供した目的がよくわからないし、提供の必要性は抽象的にも生じていなかった」とした。
しかし、
(b)収集・管理について、「任意捜査によるかぎり原則許容される」とした。

原告は(b)収集・管理の「鈍痛」がいやだ、市民社会を萎縮すると述べている。
しかし判決は鈍痛からの自由「萎縮効果論」を一蹴している。
社会全体の健康さを守るには「鈍痛からの自由」が重要だ。皆さんのように勇気がない人間でも発言できるようにすべき。
社会通念を変えるのは利害・諸個人の議論だ。

私が名古屋にいた際、イラク派兵差止名古屋訴訟の原告はみんな自分のストーリーを語れた。
だから画期的な違憲判決を取れた。
「警察による監視に不安を持つ人間はたくさんいる。
 それは市民社会を破壊する」と当事者が語るべきだと思う。
 
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質疑の際、原告の船田伸子さんや近藤ゆり子さんが、当事者としてどう思っていたかを率直に語りました。

愛敬教授は「政党やジャーナリストが、捜査機関による情報収集や提供の実態を明らかにすべき。
また、DNA型鑑定なども根拠立法すべき」としました。
さらに、最高裁GPS判決を踏まえ、「何の際限、廃棄ルールもなく情報を収集したら私的空間に入ると言ってはどうか」と提案がありました。

また、本村伸子衆議院議員から、「北海道警察やじ排除札幌地裁判決では警察法2条に言及し、『任意手段でも国民の権利に干渉した場合、無制限ではダメ』とした。大垣警察に言えることはないのか」と質問し、愛敬教授は「札幌のケースは政治的表現の自由で権利の重要性がはっきりしている。プライバシー権は『収集管理しているだけ』プライバシー侵害しているのか?となる。任意だから権利侵害が発生していないわけではないが、やや権利の面が弱い」としました。

参加者から「警察を監視するはずの公安委員会を追及する方法はあるのか」と聞かれ、愛敬教授は「第三者的な統制がない日本警察はおかしい。英国は独任制のテロ対策独立審査官がいて、 全て情報にアクセス出来、国会に報告義務がある。荷物を開けさせた件数を数えたところ、年間何万件もあり、ヨーロッパ人権裁判所で英国が負けた。
第三者機関が情報を集めるだけ、報告するだけでも警察に障害になる」としました。
 
最後に、愛知の会共同代表の浜島将周弁護士は「警察を含めて立法による措置の必要性をあらためて強く思った。
DNA型鑑定の件は、日弁連で2007年くらいに意見書がでているが、いまだに立法化されていない。GPSの立法化も遅々として進まない市民からも立法化を求める必要がある。」と挨拶がありました。
  
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・大垣警察市民監視違憲訴訟の勝利をめざす「もの言う」自由を守る会


by beshi50 | 2022-07-03 15:25 | お知らせ・報告など | Trackback | Comments(0)