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特定秘密保護法に反対するため、弁護士や市民が「秘密法と共謀罪に反対する愛知の会」を結成しました。各地のイベント、最新ニュースも載せます。集団的自衛権にも反対です。https://www.facebook.com/nohimityu


by beshi50
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オンライン学習会「『デジタル庁構想』とは何か」

秘密法と共謀罪に反対する愛知の会は、21/2/16にオンライン学習会「『デジタル庁構想』とは何か」をZoomで開催しました。
(希望者は21/2/28まで録画を見ることができます。
 no_himitsu@yahoo.co.jp にお問い合わせください)

・レジュメ
・マイナンバーカードの交付枚数
・データ共同利用権(仮称)について(案)
・「デジタル改革関連法案について」
 
オンライン学習会「『デジタル庁構想』とは何か」_c0241022_11552055.png
講師の宮崎俊郎さん(共通番号いらないネット)は、住基ネットの時代から反監視社会の運動を続けてこられました。
現在、マイナンバー違憲訴訟神奈川訴訟の原告代表です。
また、東京オリンピック反対運動も行っており、人生で一番多忙な時期にご講演を行っていただきました。

宮崎さんは、今回のオンライン学習会を例にとり、「聴衆の表情や息遣いなどを感じながら講演するのはオンラインではできないのと同様、すべてデジタルには還元できないと考えている」としました。
 
そのうえで、2000年のIT基本法成立から20年の歴史を振り返り、「市民の運動側としては『なんでもデジタル化』はよくないと主張してはどうか、オンラインにそぐうもの、そぐわないものを切り分ける必要がある」としました。
2019年政治資金収支報告書にはオンライン提出努力義務があり、36億円をかけてシステムを構築したにもかかわらず、1.13%しかオンラインで提出していなかった(平井卓也デジタル改革大臣もオンライン提出せず)という一方、例えば保育園の申請について書面だけで審査してよいのか、と、自らの経験を踏まえて述べました。

「デジタル化することは100%記録を残すことにつながり、キャッシュレスだと鉛筆1本購入する商行為まですべて口座引き落としで記録につながってしまう。
大阪の地下鉄では、顔認証でどこまで移動したかの実証実験をしようとして問題になった。行きつく先は、超監視社会の基礎ではないか。
今後、医療と教育分野が新たな領域となり、生まれてから死ぬまでの医療、薬、成績がマイナンバーを使って串刺しにできる」としました。

菅義偉首相が最も重要な課題と打ち出している「デジタル庁」創設のため、2021年2月9日にデジタル改革関連6法案が閣議決定されました。
膨大な法案にもかかわらず、一括法案として、内閣委員会と一部総務委員会で扱われそうとのこと。
審議入りは3月上旬となりそうだが、現在の日程では3月末までには成立は困難ではないかと述べています。

デジタル庁設置法案は、デジタル庁に強力な総合調整機能を持たせて予算も集めるものです。
マイナンバーと銀行口座の紐づけについては、『強制的紐づけ』はかなり問題が多いと指摘され、基本的には本人の意思に基づくとのこと。
地方公共団体のシステムもGov-Cloudとして標準化していく計画です。
また、個人情報保護法、行政機関個人情報保護法、独立行政法人個人情報保護法、自治体個人情報保護条例というレベルが違うものを、低いレベルで共通ルール化しようとしています。
自治体の個人情報保護条例は1970年代から議論されてすぐれたものになっているにもかかわらず、「2000個問題」として、2000年代に成立した国の個人情報保護法のレベルににレベルダウンさせようとするのはそれだけで相当の議論を必要とします。
宮崎さんは、マイナンバーカードのスマホへの搭載や、地方公共団体情報システム機構(J-LIS)が実質国の機関になることなどもあり、一括法で審議するとすると、議論が表面的で終わってしまうのではないかと危惧されています。
立憲民主党がカギを握るが、党として反対は厳しいのではないか、対立法案にはならない可能性があり、国会審議がほとんどなされないまま成立してしまう可能性があって非常に歯がゆいと述べています。

デジタル庁体制で、巨大なデータベースが民間も含めて自由に使えるようになることを目指しているとのこと。
しかし「なにが大切にしないといけないデータか」という価値観が、デジタル庁推進側と市民とで大きく違うと述べています。
宮崎さんらはマイナンバー違憲訴訟の中で、まだ司法で確認されていない「自己情報コントロール権」がいかに現代の社会で大切な人権か争っていますが、デジタル改革法案WGではそれとは真逆の「データ共同利用権」なる概念が提起されており、「『相当な公益性』があれば共同で利用されなければならない」とされ、非常に危険な論理だと述べています。

宮崎さんは、今回のデジタル庁構想は「マイナンバー制度の再構築」だとしています。
特別定額給付金の際、マイナンバーと紐づけられなかったというでたらめな説明をしたにもかかわらず、新型コロナウイルスのワクチンでもマイナンバーと紐づけたいとし、余計混乱させて自治体を苦しめるだけだとしています。
マイナンバーカードはあれだけポイント還元しても3200万枚にしかすぎず、運転免許証8200万人、保険証8700万人レベルにたどり着かないと意味がないとし、「マイナンバーカードの国内版パスポート化」へのこだわりを国はいまだに捨てていない、オリンピックでも情勢を見ずに突っ走る国の姿は見ていて恐ろしいとしています。
警察がマイナンバーカードの運転免許証利用を認めたのは、マイナンバー情報の警察利用に道を開いたバーター取引があったのではないかと述べています。

宮崎さんらは今後「デジタル庁構想を反監視運動として位置づけよう」「マイナンバー制度の再構築ととらえる」「デジタル化を強制されない、選択権の確立を目指す」として、3月14日(日)午後に東京文京区のシビックセンターでデジタル庁構想反対集会を開催する予定です。
最後に、アメリカ・ポートランド市長が「すべてのポートランド市民に、個人のプライバシーを危険にさらす人種差別や性差別が確認された技術を使用しない自治体を得る権利がある」と述べたことを紹介して講演は終了しました。

その後質疑に移り、活発な質問が出ました。
「『データ共同利用権』は個人の権利とは思えず、社会・国家の権利ではないか」「大垣警察市民監視事件では、『民間に情報が漏れたから悪い』ではなく、個人情報を
人格権、人権として確立すべき」「デジタル庁の職員として大量の民間の非常勤職員が採用されるが、元のベンダーの利益になるようにするのでは」「転職時の個人情報の引継ぎについて、『本人同意』はほぼ強制で、就職差別につながるおそれも」「個人の便利さと社会の便利さ、権力側の便利さのしのぎあいのような感じで難しい戦い」などの意見がでました。

宮崎さんは「デジタル庁構想に関してネットテレビに出演したが、若いお笑い芸人は『行政の手続きは非常に面倒くさいしわかりにくい。簡単にオンラインでできれば
すぐれた社会ではないか』と言ってきた。私は『一つ一つの行政手続きをやることによって、社会がどうなっているかはじめてわかる。便利になることで見えなくなることはあるのではないか』と述べたがなかなか伝わらない。一般の多くの人が『便利』だと思っていることで私たちが失っていくものはなんなのか、具体的に問いかけることが必要」と述べました。

最後に、秘密法と共謀罪に反対する愛知の会共同代表の浜島将周弁護士は「デジタル化は避けられないし、無関係ではいられない。では、どこまでデジタル化を進めるか、国がどこまで管理するか。乱暴に『国がすべてやってしまえ』ではだめだ。若い人との意識のギャップもあるが、デジタル庁構想を人権問題として考えるのが大切だ」と述べました。

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最後に、21/4/3(土)に「秘密法と共謀罪に反対する愛知の会」9周年総会があり記念講演は望月衣塑子さん「民主主義とは何か? ~菅政権とメディア~」をオンラインとウィルあいちで行う予定と紹介がありました。


by beshi50 | 2021-02-16 23:59 | お知らせ・報告など | Trackback | Comments(0)