18/11/13 学習会“日本の刑事司法制度を考える――「刑事司法改革」の功罪――”開催
2018年 11月 14日
参加者は会場一杯の33名。

【講師プロフィール】1978年、福岡県生まれ。九州大学法学部卒業、同大学院法学府博士後期課程単位取得退学。同助手・助教等を経て、現在、愛知学院大学法学部教授。専攻は刑事訴訟法で、とくに黙秘権、弁護権、被疑者の取調べ等を研究している。
主要著作として、共編著『接見交通権の理論と実務』(現代人文社、2018年)、「被疑者・被告人の防御主体性――黙秘権を手掛かりに」『シリーズ刑事司法を考える第3巻 刑事司法を担う人々』(岩波書店、2017年)、「黙秘権保障と刑事手続の構造」刑法雑誌53巻2号(2014年)ほか、多数。
レジュメ
http://www.nagoya.ombudsman.jp/himitsu/181113-1.pdf
「警察による市民運動へのの監視・弾圧を許さない」というテーマと、直接リンクするお話ではありませんでしたが、石田先生の明るくて元気なお話に、参加者一同、大変興味深く聞き入りました。

「一連の司法改革は誤判防止の要請に応えるものとなっているか?
→ 「NO]である。”入り口”と”出口”が整合していない。
「刑事司法改革」の”入り口”は、「誤判冤罪の防止」にあったはずだが、”出口”は、司法取引・刑事免責制度・通信傍受の緩和など「捜査権限の拡大」になってしまった。

イギリスの刑事司法制度と比較することで、私たち自身が何となく当たり前として見過ごしがちなことが当たり前ではない(立法で変えられることや法運用の歪みを正していくことで解決できることがたくさんある)ことを多々指摘された。
・被疑者取り調べに時間がかかりすぎる(起訴前の身柄拘束時間が長すぎる)
・取り調べでの弁護人立ち会いが認められていない
・法的には認められている黙秘権行使が不利益推認に使われてしまっている
・証拠開示が不十分
・公開の裁判での無罪率・・・日本では0.1%以下、イギリスでは半分程度
・裁判中も身柄拘束が続く場合が多い
(Cf.イギリスでは裁判中は在宅-保釈-が原則。保釈事故(逃亡)も多いが、保釈を認めた裁判官の落ち度とはみなされていない)
・検察側に上訴権が認められていている
・日本には再審の法整備がないので、「裁判官次第」になってしまっている
・確定判決を出した裁判所に再審請求をすることでハードルが高くなっている
・再審における国選弁護制度の欠如(法律扶助の欠如)
(Cf.イギリスには公的独立機関「刑事事件再審委員会(CCRC)」が設置され、すべての証拠へのアクセス権限があり、鑑定等の費用も公費で行われる)
などなど。

他方、日本では「人質司法」がいまだに行われており、起訴前の「密室」で多くのことが決まっていってしまう-「官優位」「官の無謬性」の発想が横行している。
そのことを変えて行くことは、今回の連続学習会のテーマである「警察による市民運動へのの監視・弾圧を許さない」に繋がっていくということも、強く感じた。


講演の後、活発な質疑が行われ、大変意義ある学習会となっった。