第3回連続学習会 治安維持法から迫る共謀罪の本質(名古屋)に170人
2017年 05月 29日
2017年5月29日(月),ウィルあいち3階の大会議室にて,九州大学名誉教授の内田博文さんをお招きして「共謀罪」連続学習会の第3回「治安維持法から迫る共謀罪の本質~政府は何を蘇らせようとしているか」というテーマでご講演を頂きました。
大きな会場でしたが,約170名もの方にご参加頂き,活発な質疑が寄せられました。

・内田先生配付資料
http://www.nagoya.ombudsman.jp/himitsu/170529.pdf
以下,内田先生のご講演の要旨です。
・戦争への道
戦前,日本は坂道を転げ落ちるように戦争に道に突き進んできたが,戦前の法整備や国際社会の中での日本の動きと現在のそれがよく似ている。
・治安維持法の制定と改正
大正14年4月22日に制定された治安維持法は,当初は結社規制法として位置づけられ,その取り締まり対象は共産党その他の非合法左翼政党(「国体変革」「私有財産否認」などの概念で定義しました。)でした。
しかし,同法の度重なる改正と大審院による逸脱適用により,治安維持法の取締り対象は,幾何級数的に拡大した。①共産党関係者から,②その「外郭団体」関係者等へ,そして,③労働組合を含む合法左翼関係者とその「外郭団体」関係者へ,④さらに,自由主義・民主主義・反戦主義などによる「サークル」活動関係者等,⑤新興宗教関係者等,へと幾何級数的に拡大され,「普通の人たちの普段の生活」が取り締まりの対象となった。
・共謀罪の法案化
翻って,現在審議されている共謀罪はどうか。
政府は,対象犯罪を277犯罪に絞り込んだとしているが,この程度の絞り込みでは濫用のおそれは消えない。
特に治安維持法の罪で,共謀罪と近似していたのは,「結社・集団目的遂行行為」の罪であり,この罪は,普通の国民の普段の生活を取り締まるのに猛威を発揮し,妻が夫のために家事等をすることも「目的遂行行為」に該当するとされるなど,「逸脱」解釈・適用がなされた結果,まったく歯止めがないものとなった。
「組織的犯罪集団である団体」の活動という要件についても,昭和16年改正治安維持法においては,研究会や親睦団体,新興宗教団体等も,「国体変革目的集団,支援集団,準備集団」「国体否定又は神官・皇室尊厳冒涜目的結社・集団」に該当するとされたという歴史からも,歯止めになるか疑問というべき。
政府によると,「共謀」にいうところの「計画」とは「具体性・現実性」をもたなければならないとされているが,判例上,共謀の行われた日時,場所またはその内容の詳細,すなわち実行の方法,各人の行為の分担役割等について,いちいち具体的に判示することを要するものではないと判示されており,やはり絞りにはなり得ない。
・治安維持法と共謀罪の類似性
国民主権,議会制民主主義,平和主義,基本的人権の尊重に反する,安保法制や秘密保護法とも関連する,近代刑法の基本原則に反する,市民刑法ではなく社会の構成員を敵と味方に分け危険性があるとみなされる者を敵として排除していくという敵味方刑法であるという点,事実上の連座制である点,戦争国家のための法整備の一環である点などで,共謀罪と治安維持法は非常によく似ている。
・最後に
私には関係ないということはあり得ない,最大の綱引きはこの点にある。
以上が,ご講演の要旨です。
その後,親族が治安維持法により逮捕された方のお話しを伺い,質疑応答を経まして,中谷共同代表が,「現在の政府が戦前と同じ歩みを進めているということがよく分かった。このような状況で,私たち市民が萎縮するようなことはあり得ない。憲法を武器に反対の声を上げよう。」と力強く閉会の挨拶を述べました。
治安維持法の「逸脱」適用の恐ろしさ,治安維持法と共謀罪の類似性がはっきりと分かるご講演でした。




6月6日(火)18時30分にも「共謀罪連続学習会」の特別編として,英国エセックス大学人権センターフェローの藤田早苗さんを講師にお招きし,ウィルあいちセミナールーム1・2にて,「国際社会から見た日本の表現の自由とメディアと『共謀罪』」というテーマでご講演を頂きますので,ふるってご参加下さい。
http://www.nagoya.ombudsman.jp/himitsu/renzoku2017-1.pdf
