安保関連法案に関する地方議会による意見書一覧から垣間見えること
2015年 08月 10日
会員の阿部さんが、今年4月1日から8月3日までに参議院で受理された意見書をもとに、表を作成し、分類整理をし、コメントを書いて下さいました。
「安保法案」地方議会意見書一覧 表1(エクセルファイル)
http://www.tokuyamadam-chushi.net/sonota11/ikenshohyou1.xlsx
「安保法案」地方議会意見書一覧 表2(エクセルファイル)
http://www.tokuyamadam-chushi.net/sonota11/ikenshohyou2.xlsx
安保関連法案に関する地方議会による意見書一覧から垣間見えること
阿部太郎
表1は、2015年4月1日から2015年8月3日までに参議院で受理されたいわゆる安保関連法案に関する地方議会の意見書一覧です。これは、「安保」、「憲法」、「戦争」、「平和」、「集団的自衛権」、「9条」という6つのキーワードで検索されたもので、直接安保関連法案に言及していないものもありますが、関連しているということで一つにまとめています。
以下、この一覧から垣間見えることについて書かせていただきます。
ネット上で全ての意見書本文を手に入れることができないので、主に題名から内容を推測していますが、その点はご了承ください。
341の意見書のうち、反対や廃案、撤回を求めるものが129、慎重審議や徹底審議を求めるものが178となっています。これは、法案の内容に対する危惧と共に、この間の衆院での強行採決に示されているような法案審議の手続き上の懸念が反映されていると考えられます。
市町村議会に比べて県議会による意見書は少なく、これはより小さな自治体の方が住民の意見を汲み取りやすいということを示していると考えられます。それでも、岩手県議会が「安全保障関連法案の廃案を求める意見書」を、鳥取県議会が「平和安全法制整備法案等の慎重審議を求める意見書」を採択していることが特筆されます。新潟県議会では、同じ日に「憲法の基本原理を順守した平和安全法制に係る誠実で真摯な議論を求める意見書」と「憲法改正について国民的議論の喚起を求める意見書」の2つの意見書が採択されており、憲法改正をめぐるせめぎ合いがあることが推測されます。他には、長野県議会が意見書を採択していますが、法案について国民的な理解が得られるようにわかりやすく丁寧な説明を求めるという内容に留まっているようです。
表2は、意見書の内容を都道府県別に分類したものです。
意見書を採択した地方議会の数は、北海道65と長野54が突出しており、次いで福島16、岩手13、埼玉12、東京12、沖縄12と続きます。自衛隊駐屯地が多数存在する北海道や、戦前満蒙開拓団で大きな被害を出した長野、東日本大震災被災県である福島と岩手、基地問題を抱える沖縄が上位にきていることが示唆的です。
意見書のほとんどはこの6、7月という短期間に全国各地で採択され、その圧倒的多数が安保関連法案に対して反対か慎重審議を求めたものであり、全体として日本中の草の根でこの法案に対する危惧が急速に高まっていることを示していると考えられます。
表2