秘密保護法で大きな権限持つ内閣情報官/法案作成過程
2014年 12月 29日
秘密保護法で大きな権限持つ内閣情報官
「何をやるのか」「やっていいのか」 法制局内で懸念/法案作成過程
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-12-28/2014122801_01_1.html
(下のほうにこの記事を貼り付けます)
しんぶん赤旗のこの記事にコメントを寄せている中谷雄二弁護士から、「秘密保全法に反対する愛知の会」のMLに投稿されたもの。
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中谷です。
昨日の赤旗新聞の1面トップ記事で、
秘密保護法で大きな権限持つ内閣情報官、「何をやるのか」「やっていいのか」 法制局内で懸念
という記事が掲載されました。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-12-28/2014122801_01_1.html
私のコメントも載っていますが、これは、赤旗新聞が内閣法制局から情報開示請求によって、2013年9月3日~法案上程直前までの内閣法制局における法案を検討した文書を入手し、私に分析依頼があり、分析したものです。
時期がパブリックコメントを募集していた時期と重なり、そのこともあってか、たった1か月で法案が大きく変わったことがわかります。
手書きの書き込みで特に目を引いたのが、昨日の記事に掲載された法案の付則に置かれた内閣法の改正に関する条文です。何気なく見過ごしそうな組織法の改正に内閣法制局の担当官が手書きで、「何をやるのか」「そういうものを情報官がやっていいのか」と書かれているのです。尋常でない書き込みだと気づき、内閣情報官の本来の任務と新たに改正された条文を見て、この書き込みの意味が分かりました。
内閣情報官は、内閣情報室のトップとして、情報の収集調査にあたることを任務とします。国家安全保障会議に情報を収集し、伝えるのも内閣情報官の役目です。この内閣情報官に秘密保護法に関する企画・立案・調整の権限まで与えるというのが、改正法の意味です。
安倍首相は、臨時国会での質疑で集団的自衛権行使の前提となる情報が特定秘密と指定されることを認めました。その情報は内閣情報官が収集し、国家安全保障会議に伝える情報です。その情報を特定秘密
として指定し、その秘密を保護する方策の企画・立案・調整等の権限を握るのです。
戦争するかどうかという国民にとってもっとも重要な情報を内閣情報調査室のトップが外交・安全保障に関する国の方針を決める国家安全保障会議に伝え、漏らさない体制づくりも担うというのですから、情報独占が起こることが予想できます。果ては、情報操作の恐れすらあるというのが、私のコメントの意味です。
そして、このことを内閣法制局の担当官が感じ、懸念を表明していました。 時期はまさにパブリックコメントにより、国民から秘密保護法についての危険性を指摘する大きな声が寄せられている2013年9月13日です。
私は、一人の法律家の懸念の表明であるとともに国民の反対の声が大きく盛り上がることによって、危機感を募らせていた担当官に懸念を表明させたのだと考えています。
2014年12月29日
中谷雄二
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◇ しんぶん赤旗 2014年12月28日(日) 記事
秘密保護法で大きな権限持つ内閣情報官
何をやるのか」「やっていいのか」 法制局内で懸念/法案作成過程
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-12-28/2014122801_01_1.html
秘密保護法では、“日本版CIA”とよばれる内閣情報調査室(内調)トップの内閣情報官が運用上の大きな権限を持っています。これについて法案作成過程で審査した内閣法制局の担当官が、「(内閣情報官が)やっていいのか」などと強い懸念を示す、肉筆の「書き込み」意見をしていたことが27日、本紙が入手した情報開示文書で分かりました。(山本眞直)
本紙が文書入手
[写真] 内閣法制局が9月13日に審査した内閣情報調査室の秘密保護法案。手書き部分は内閣法制局担当官が、内閣法改正による内閣情報官の関与について書き込んだ懸念=内閣情報調査室の開示文書
法制局担当官による書き込みは、同法案の閣議決定を目前にした2013年9月13日、同法素案の付則第5条「内閣法の一部改正」部分に記述されています。
「一部改正」は、秘密保護法で内閣官房が関与する法的根拠を明示するためのもの。内閣情報官の事務権限に「『特定秘密の保護に関するもの(内閣広報官の所掌に属するものを除く)及び』を加える」と明記しました。
法制局担当官は、改訂点にたいし「何をやるのか」「そういうものを情報官がやっていいのか」などと、懸念を書き込みました。
開示文書を分析した法曹関係者は「内閣情報官に強い権限を与える一方、具体的に何をするのかが明確ではないことに、権限が乱用される危険性を懸念しているのではないか」と指摘します。
内閣情報官は、秘密保護法にともなう秘密指定の妥当性をチェックするためとして新たに設立された「内閣保全監視委員会」でも委員に就任。法制局担当官が懸念したように、同法全般に大きな権限を与えられています。
これまでの内閣法では、内閣情報官について「内閣の重要政策に関する情報の収集調査に関する事務」(第12条)を担当するとあります。今回の改訂で内閣情報官は、「我が国の安全保障に関する外交政策及び防衛政策の基本方針の重要事項のうち、特定秘密保護法に関する企画、立案、総合調整までを行う」ことを加えました。
一人の人間が情報操る危険
「秘密保全法に反対する愛知の会」共同代表・中谷雄二弁護士の話 内閣に集まる情報の収集分析の責任者の内閣情報官に、さらに秘密保護法上の権限を与えることによって生じるであろう、情報を一人の人間が操る危険性に対する危惧を法制局の担当官は書き込んだのではないか。
内閣情報官が特定秘密の保護に関してまで事務を行う権限を持つとすれば、その危うさは計り知れない。内閣あるいは国家安全保障会議に伝えられる、海外での武力行使をめぐる集団的自衛権行使などの情報が内閣情報官によって恣意(しい)的にゆがめられ、隠される危険性が生まれる。これほどの悪法は廃止しかない。
内閣情報官 内閣官房に属する内閣の情報機関、「内閣情報調査室」のトップ。内閣総理大臣に内閣に関わる重要政策や情報を直接、助言や報告ができ、アメリカのCIA(アメリカ中央情報局)など世界の諜報(ちょうほう)・情報機関とも密接に連携しています。歴代の情報官はいずれも警察庁出身で警備・公安畑の幹部経験者が担っています。