13/9/14仙台弁護士会シンポ「秘密保全法で『守られる秘密』と守られない私たちの自由」
2013年 09月 14日
守られない私たちの自由」を開催し、約50名が参加しました。
配布資料
・http://www.jkcc.gr.jp/data/130914senben.pdf
まず、日弁連秘密保全法制対策本部事務局長の清水勉弁護士が、
「秘密保護法制の問題点 誰のための情報隠しか?」と題し、以下述べました。
・9/3に公表された概要の説明
国会議員も過失で情報を漏らしたら懲役5年に。
国のみ特定秘密に指定。報告書で書かれていた、地方自治体や独立行政法人は
指定しない、とされたが、国の情報は地方自治体や独立行政法人にも流れうる。
・テロ活動と決め付けるのは官僚。昔市民オンブズマンも公安調査庁に監視されていた。
・概要で示された適性評価では秘密漏えいの危険度を予測できず
無意味なプライバシー侵害である。
・マスコミはおろか国会議員をも処罰対象にしてしまう重大な法案にも
かかわらず、パブリックコメントは2週間しか募集していない
・情報漏えい対策は情報管理を徹底すればほぼ防げる。
・日本版NSCと秘密保護法がセットになり、官僚が政治を支配するようになる。
☆当日発表のパワーポイント
http://www.jkcc.gr.jp/data/130914nichiben.ppt
☆上記PDF
http://www.jkcc.gr.jp/data/130914nichiben.pdf
続いて、NPO法人 情報公開市民センターの内田隆氏が、「秘密保全法
立法過程情報公開から見えてくるもの」と題し、以下述べました。
・法案案と官僚間の議論の中身を情報公開請求したが「不当に国民の
間に混乱を生じさせるおそれ」「担当者に対し、筋違いの批判等を招き
嫌がらせやいたずら、偽計といった圧力や干渉等の影響のおそれ」があるとして
内容は全部非公開
・開示された5709枚の黒塗り文書を分析したところ、警察庁が28回協議しており、
警察庁が一番法案作りに熱心である。理由は、防衛についてはすでに法律があり、
外交もほとんど漏れていないため。
・内閣法制局との審議では、適性評価の「思想・良心、信教の自由との関係」
「法の下の平等」を17回も審議しており、憲法に抵触するおそれが
あると官僚も認識していること。
・すでに2012年4月には逐条解説案、用例集案が作成していること。
パブコメでは概要しか示されておらず、詳細が不明なのは論外。
・市民オンブズマンの過去20年の活動のリスクアセスメントをしてみたところ、
国の情報はもちろん、地方自治体や独立行政法人等の情報も
特定秘密かもしれないとして非公開になるおそれがある。
市民オンブズマンに対しても、内部告発者捜査名目でパソコンなどが押収される
おそれもある。
・原発問題でも、国と自治体との協議情報や、大学での研究情報が
テロ活動防止名目で非公開になるおそれも。SPEEDI情報もテロ活動防止として
不開示を正当化されるおそれがある。
・自衛隊の装備・物品納入の談合調査活動が「特別秘密」探知収集にあたるのでは。
・全国会議員に対し、国会議員に重大な影響を与えるとしてアンケートを送付した。
9月30日締切。
☆当日発表のパワーポイント
http://www.jkcc.gr.jp/data/130914.ppt
☆パワーポイントPDF
http://www.jkcc.gr.jp/data/130914.pdf
☆秘密保全法 法案制定過程の情報開示請求から見えてくるもの
http://www.jkcc.gr.jp/data/130819.pdf
続いてパネルディスカッションを行いました。
河北新報論説委員の早川俊哉氏は、「2011年3月11日の震災当日は福島市におり、
放射線量が原発に近いいわき市より福島市の方が高い理由がずっとわからなかったが、
しばらくしてからSPEEDI情報が公開され、ようやく原因がわかった。
SPEEDIには地形情報が入力されており、風向きをいれれば予測が可能で、
見事に飯館、福島市に放射能がくると予測されていた。このような人命に関わる
データが非公表にされるのは許されない」と述べました。
また、陸上自衛隊情報保全隊による国民監視差止訴訟の原告で、
イラク派兵反対の歌を街頭で歌っていてシンガーソングライターの方(芸名)が発言し、
「2003年12月に地元の亘理町で歌を歌ってイラク派兵反対を訴え、もう1人が署名を集めていたら、
2007年6月になって、当時陸上自衛隊情報保全隊に監視されていたことが判明した。
2003年12月のレポートでは芸名が書かれていたが、2004年1月レポートでは本名と
職場が記載されていた。本当にそれだけしか調べていないのか大変不安だ。
どこまで調べたのか裁判で聞いたが、自衛隊は認否しない。
新聞に事件が掲載され、実家の父にばれた。『孫が被害にあっては困る』として、
記者会見には出ないようにしている。」と述べました。
続いて、国民監視差止訴訟弁護団の十河弘弁護士が、
「そもそも陸上自衛隊情報保全隊は、陸上自衛隊内部情報が外に漏れないようにする部隊。
それを、必要な範囲で部隊保全するという名目で、探知収集、襲撃、妨害、
暴力が無いかをあらかじめ知るために、外部からの不法な呼びかけが無いかを
調査し、関係者の他の活動や個人までも調査する、という拡大解釈を行っている。
これら拡大解釈は法律に基づかずに行っている。
秘密保全法ができたら、調査が合法化されるだけでなく、拡大解釈して
なんでもできてしまう」と述べました。
・自衛隊の国民監視差止訴訟を支援するブログ
http://blog.canpan.info/kanshi/
早川俊哉氏は、「マスコミは記者クラブにいて、発表資料に頼ってばかりいるという
批判があるが、記事のオリジナリティを求めて朝夜直接取材をしている。
まれに、相手から『脅すつもりか』といわれる事もあるが、そこでやめていたのでは
何も出ない。
役所は、出す情報は少なくしたいと考えているのだろう。
もし秘密保全法ができると、何が特定秘密かわからないため、心理的に影響する。
見せしめ的に摘発すると、強制捜査が会社に入り、パソコンデータ全部押収されてしまう」
と述べました。
清水勉氏は「野球賭博で押収した携帯電話データから八百長相撲が判明したが、
捜査資料は流用してはならず違法。このようなことが今後も起こるのではないか。
また、過去読売新聞が中国潜水艦火災記事を書いたが、これはアメリカのスパイ衛星の
性能が判明してしまった。今後摘発されるおそれがある。」と述べました。
内田隆氏は「概要では拡張解釈の禁止が記載されているが、
自衛隊情報保全隊訴訟では、国は『国民を監視してもただ監視しているだけで
国民には実害は無い』と述べている。秘密保全法ができたら『宗教や思想状況を
やめさせているわけではない。監視しているだけだ』と述べる可能性があり、
拡張解釈の禁止は全く意味が無い」と述べました。
また、「内部告発が市民オンブズマンに寄せられており、それを元に
情報公開請求や住民訴訟を起こしてきたが、今後は「特定秘密かもしれない」と
活動を躊躇する可能性がある。
なにが特定秘密かわからないことで萎縮効果を産む事がなにより怖い。
また、仮に刑罰をおそれて「特定秘密を扱いません」と宣言したら、そんな市民団体を
だれが信用するのか。」と述べました。
さらに、「みなさん、小学校、中学校、高校、大学の同級生のなかには、自衛隊にいる人、
警察にいる人はひとりくらいはいるはず。秘密保全法ができたら国民全員を
合法的に監視できる社会になってしまう」と述べました。
「情報は誰のものか」という質問に対し、
清水勉弁護士は、「建前は国民だが、実務上は責任あるものが専門性をもって
扱うべき。責任あるものとは、覚悟と説明ができるという意味。
公文書管理法と情報公開法が必要不可欠。
他国では20年後、30年後に自動的に公文書が開示される制度があり、
『過去こんなに誤った』ということが明らかになれば、そのときの主権者にとって
意味がある」と述べました。
また、秘密保全法制定のきっかけとされる、尖閣沖中国漁船衝突事故について、
清水勉弁護士は「そもそもあれは秘密では無い。
しかも秘密にしてはいけない、できないもの。
特定秘密保護法 ができても特定秘密にはならないと政府の担当者も認めた。
画像は日本独占ではなく、アメリカも衛星画像を持っているはず。
アメリカが画像を改ざんした場合、情報戦で負けてしまう。
日本政府が秘密にするのは、対応を決める数時間だけだ」と述べました。
スパイ天国との指摘に対しては、
清水勉弁護士は「外務省はそもそもスパイ組織。外国の情報を入手するのが仕事。
国際交流がこれほど盛んになっている現在、全ての人がスパイといえる。
現在、国の情報というより、企業情報のほうがスパイに狙われている。
企業にとって武器ではあり隠すべきところであるが、世界で売るためには
公開しないといけない。秘密は国境を超える。
これらはセキュリティの問題であって、国が一律に罰則をつけるのに
どのような意味があるのか。」と述べました。
最後に、内田隆氏は
「2020年東京オリンピックが先週決まったが、警視庁はもうテロ対策として
機動隊が鉄パイプ攻撃防御、催涙弾発射などの訓練を行っている。
東京オリンピックに反対する市民はテロリスト予備軍だとして、徹底的に調査される
おそれもある。
また、パブリックコメントは女優の藤原紀香さんもブログで呼びかけ、
提出したとの事。
http://www.norika.ne.jp/cgi-bin/spdiary-j.cgi?id=7&file=201309 名古屋では、弁護士や市民団体、労働組合などで『秘密保全法に反対する愛知の会』を
結成し、月2回の街頭宣伝、講師派遣、学習会、ニュースレター発行、
ブログ・ツイッターでの宣伝などを行っている。
http://nohimityu.exblog.jp/
パブコメ文例を公表したところ、1日で22000件のアクセスがあった。
ぜひ皆さんで『秘密保全法に反対する宮城の会』を作ってほしい」と述べました。
清水勉弁護士は
「オリンピックでテロ対策というのは国際的には当然。
警視庁は機動隊をオリンピック対策名目で拡充する大義名分を得た。
それら費用の多くが裏金や天下り先に流れる可能性がある。
テロは国の背景などを分析する必要がある」と述べました。
また、「秘密保全法は公金の無駄遣いを産む。
市民オンブズマンは自治体の情報公開請求を行い、住民訴訟で無駄の返還を求めている。
国レベルの住民訴訟制度は現在はなく、すでに桁違いの税金の無駄が発生している。
今後、国に対して情報公開請求し、談合では無いかと突っ込みを入れる事が、
秘密保全法ができるとできなくなり、ますます公金の無駄が発生してしまう」
と述べました。
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「特定秘密の保護に関する法律案の概要」に対する意見募集
13/9/17(火)必着(郵便は消印有効)
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=060130903&Mode=0
メールか郵送かFAXかメールフォームで。
〒100-8968 東京都千代田区1-6-1
内閣官房内閣情報調査室「意見募集」係宛
tokuteihimitu@cas.go.jp FAX03‐3592‐2307
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・日本弁護士連合会
秘密保全法制に反対(秘密保全法制対策本部)
http://www.nichibenren.or.jp/activity/human/secret.html
・NPO法人 情報公開市民センター + 全国市民オンブズマン連絡会議
秘密保全法に反対します
http://www.jkcc.gr.jp/menu6.html
・仙台弁護士会シンポジウム「秘密保全法で『守られる秘密』と守られない
私たちの自由」開催のご案内【平成25年9月14日開催】
http://senben.org/archives/4689
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↑秘密保護法案の概要を説明する、清水勉弁護士

↑シンポジウムを終えた内田隆氏