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特定秘密保護法に反対するため、弁護士や市民が「秘密法と共謀罪に反対する愛知の会」を結成しました。各地のイベント、最新ニュースも載せます。集団的自衛権にも反対です。https://www.facebook.com/nohimityu


by beshi50
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秘密保全法 法案制定過程の情報開示請求から見えてくるもの

NPO法人 情報公開市民センターは、2013/8/19に「秘密保全法 法案制定過程の
情報開示請求から見えてくるもの
」を発表しました。
現在行っている立法過程情報公開訴訟並びに開示文書から見えてきたものをまとめました。

なお、2013/9/7(土)-8(日)京都で行う第20回全国市民オンブズマン京都大会にて、
上記を発表するとともに、全国市民オンブズマン連絡会議は、過去の活動に照らして
「秘密保全法『アセスメント』の報告」を行います。
http://www.ombudsman.jp/taikai/

・秘密保全法 法案制定過程の情報開示請求から見えてくるもの
http://www.jkcc.gr.jp/data/130819.pdf

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秘密保全法 法案制定過程の情報開示請求から見えてくるもの
NPO法人 情報公開市民センター

1.はじめに
 私たちNPO法人 情報公開市民センター(「市民センター」と略す)と全国市民オンブズマン連絡会議は、平成24年3月5日付で「秘密保全法の制定に反対する」声明を連名で発表している。日本弁護士連合会ならびに全弁護士会、報道団体・市民団体なども秘密保全法に反対の決議・声明をあげ、法案の国会提出や法制定に反対している。こうした反対にもかかわわらず、政府は2013年10月に開会予定の臨時国会に「秘密保全法」の提出を予定していることが報道されている。
この法律が制定されてしまうと、知る権利の形骸化に加え、秘密保全の名の下、広く国民、市民を政府の監視下に置くことになりかねない。ところが、「秘密保全法」については、有識者会議の報告書が平成23年8月に提出されただけで、肝心の法案は国民の間に明らかにされていない。これは法案の公表によって、国民の間に秘密保全法に対する反対運動が活発化することを政府が警戒した、悪質な情報隠しと言わざるを得ない。市民センターは法案制定過程の情報を少しでも明らかにし、多くの市民に秘密保全法の危険性を理解してもらうため、秘密保全法の立法過程の情報の開示請求を行うとともに、全国の弁護士による弁護団を結成し、国の不開示処分を争う訴訟を提起した。

2.法案ならびに制定過程の情報公開請求するも内容すべて不開示
法案は内閣官房内閣情報調査室が中心となって作成、検討をしている。そこで市民センターは、法案の内容や、また各省庁でどのような議論がなされているのかという立法過程に関する情報を、平成24年3月26日に内閣情報調査室に開示請求した(「秘密保全法制に関する法令等協議、法令以外の協議」に関する文書)。ところが内閣情報官は、法案だけでなく、省庁間での議論の内容のほとんどすべてを、情報公開法5条3号、5号、6号に該当することを理由として不開示としてきた。
  これに対して市民センターは不開示処分の取り消し訴訟を平成24年11月21日、名古屋地裁に提訴した。

3.裁判の争点
 争点を減らして迅速な判決を得るため、この訴訟の争点を次の2点に絞った。
(1)開示によって「国民の間に未成熟な情報に基づく混乱を不当に生じさせるおそれがあり、また、率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれや、それにより今後の法案化作業に支障が及ぶなど、内閣情報調査室の事務の適正な遂行に支障をおよぼすおそれ」があるとして「秘密保全法制に関する関係省庁相互間における審議、検討若しくは協議の具体的な内容が記載されている部分のすべて」を不開示としている点(法5条5号、6号)
(2)開示によって「他国との信頼関係を損なうおそれや、それによって今後の調査研究に支障が及ぶなど、行政機関が行う事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある」として「公にすることを伝達することなく諸外国の行政機関等から入手した情報」を不開示としている点(法5条3号、6号)

4.裁判の進捗状況
  進行協議を経て、各文書で何が非公開なのか、ボーンインデックス(=不開示箇所を個々に特定して、なぜその箇所が不開示なのかがわかる形で主張を整理して提出すること)を被告国に作成させた。国は開示請求対象文書1994枚の情報を23に類型化し、それぞれの不開示部分の枚数、概要と法5条の不開示事由該当性について説明してきた。
しかし、国の主張は上記争点(1)については、「最終的な方針であるとの誤解や憶測を招きかねず、国民の間に不当な混乱を生じさせるおそれがある」、「検討中の条文案等に対する関係省庁の立場や意見が明らかになり、外部からの干渉、圧力等により率直な意見の交換、意思決定の中立性が害されるおそれがある」「関係省庁の秘密保全法案の担当部局や担当者に対し、筋違いの批判等を招き、嫌がらせやいたずら、偽計といった圧力や干渉等の影響を受け、我が国の安全を脅かすことを企図する勢力が、自らに有利な内容に議論を誘導すべき、秘密保全法案の担当部局や担当者等に対して各種工作活動を行うおそれにより、当該政策に不当な影響を受けるおそれがある」といったものであった。
 上記争点(2)の「秘密保護法違反事件の刑事司法手続における秘密保護制度」【資料1】に関しては、「我が国の駐在官が相手国担当者との信頼関係の下で聴取した情報であり、公にすることを前提に聴取したものではない。情報交換の内容を外部に明らかにしないとの暗黙の了解を前提とするもので、その内容が公にされれば我が国が保秘に対する信頼を失う」としている。
 そもそも不開示決定に際して国が、情報の開示によって市民の間に議論が巻き起こることを不当な混乱としている点は問題だ。秘密保全法が憲法に反する運用がなされるおそれのあることは、昨年政府が公表した有識者会議の報告書も認めているが、憲法に違反するおそれの大きい法案だからこそ、市民の間で十分に議論されることが必要なはずだ。できるだけ世論を刺激しないように、国民が意識しない間に法案を通してしまいたい、という国のホンネが透けて見える。
 また、訴訟になってからの国の主張も抽象的だったり荒唐無稽だったりする。「外部からの干渉、圧力、嫌がらせ、筋違いの批判、偽計って具体的に何を想定しているのか。」「だいたい嫌がらせや筋違いの批判で政府の意思決定の中立性が害されることがあるのか。」「外国勢力が情報公開請求結果をアテにして工作をするのか。そんなことは有識者会議の報告書にも記載がないゾ。」「暗黙の了承なんてあるのか。」という反論がすぐに出てこよう。こういった主張に対する反論は具体的に行わなければならない。しかし、だからといってそれにより、訴訟が遅延し、無駄な時間を費やさないようにすることも必要である。

5.これまで何が明らかになったか
  今回裁判を行っているのは、平成23年8月~平成24年3月26日分の法令協議に関するものであるが、その後の法令協議も情報公開請求し、平成24年10月12日分まで入手済みである。省庁間の協議内容はおろか、条文案の骨子・内容、条文数すら不開示である一方【資料2】、訴訟の経過や開示された5709枚を分析したところ、以下の事実が判明した。
 (1)名称が「特別秘密」から「特定秘密」に変更になったこと。
   国の準備書面で判明。名称変更は、国民によりソフトイメージを与えるためではないだろうか。
(2)「特定秘密」に指定された情報は情報公開法5条3号、4号該当情報となり、情報公開法の対象外となるものではないとのこと(被告国の準備書面。「行政文書」から特定秘密がはずされる、というのではなさそうだ。)。
(3)当初は平成24年2月には国会提出予定だった【資料3】。平成23年9月15日資料の、秘密保全法制スケジュールで判明。
(4)平成24年4月には逐条解説案、用例集案、平成24年5月には参照条文集案まで完成している。法律案はこの時期にはほとんど完成していると見られる【資料4】。
(5)内閣官房内閣情報調査室が平成23年9月から平成24年10月12日までに、延べ47回も内閣法制局に法案等資料を持ち込み、審議している【資料5】。
(6)各省庁の文書での質問の多くは平成24年5月ごろまでに終わり、その後はほとんど質問していない【資料6】。これも法律案が平成24年5月にはほぼ完成している証拠である。
(7)秘密保全法を所管する内閣情報調査室に文書で最も多く質問しているのは警察庁の28回であり、外務省の17回、防衛省の12回と続く【資料6】。
警察庁との協議回数が多いのはそれだけ警察庁がこの法案制定に熱心だからである。ちなみに、防衛・外交情報については自衛隊法、MDA法(日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法)や刑事特別法で漏えいを厳しく処罰している。
   この事実が明らかにするのは、今回の秘密保全法が目指すのは、③公共の安全と秩序の維持 に関する情報 を厳しく管理しようとしているという点である。これが警察庁が立法化に熱心な理由ではないか。因みに、昭和60年に国会提出された国家秘密法案にはこれがない。法案を検討している内閣情報調査室には、警察庁キャリアが大勢出向している。近年、警察が保有する情報の流出や、裏金問題や違法捜査に関する内部告発などがあった。秘密保全法とは、公共の安全と秩序の維持情報(主に警察情報、原発情報なども含む可能性あり)を、日米同盟情報レベルで防御するだけでなく、調査・監視しようとする市民・マスコミを徹底的に監視し、刑罰の威嚇をもって対応するものだと言える。
   なお、参考までに、警察庁と内閣情報調査室とのやり取りの一部を掲載する【資料7】。
(8)「適性評価制度と適格性確認制度の比較」が作成されている【資料8】。平成24年8月21日作成。法律に基づかない現行の「適格性確認制度」のあらましが若干判明した。秘密保全法における「適性評価制度」については全て非公開。
(9)「報告書に対する日弁連の指摘事項と本法における対応等」が作成されている【資料9】。
平成24年8月24日作成。本法における対応等は全て非公開で、市民・国民と対話をして法律を作ろうという気がない。
(10)協議項目名すら非公開の文書については、国会・裁判所を本法の対象として検討している可能性が高い【資料10】。国会議員や裁判官まで秘密保全法の適性評価制度の対象となる可能性が高い。
(11)内閣情報調査室が内閣法制局に持ち込んだ資料を分析したところ、最も多いのが、「適正評価と思想・良心及び信教の自由との関係について」「適正評価と法の下の平等との関係について」の17回であり、本法案が憲法に抵触するおそれがあることを立法担当者が十分承知していることがわかる【資料11】。また、「刑事裁判手続における特別秘密の立証方法について」が13回と続いて多く、憲法82条の裁判公開の原則と秘密保全法との兼ね合いについて多く議論していることも判明した。なお、先に述べた【資料1】は各国の刑事裁判手続における特別秘密の立証方法についての記載である。

上記、非公開になった文書や分析結果、訴訟通信は市民センターのwebに掲載している。 http://www.jkcc.gr.jp/menu6.html

8.秘密保全法の制定を阻止しよう
上記裁判や情報公開請求結果からは、市民・国民への説明責任を果たそうとする国側の態度が一切見られない。違憲のおそれがある秘密保全法であるからこそ、情報を公開した上での国民の充分な議論が必要不可欠である。そしてまた、本来必要なのは、知る権利を無にし、市民のプライバシーを侵害する秘密保全法ではなく、情報公開法の改正による積極的な情報公開である。しかし自公政権が復活し、民主党政権時に提案されていた情報公開法改正案は立ち消えとなっている。
  そもそも、秘密保全法を制定する必要などない。この法制度で国が隠そうとしている「特定秘密」のほとんどは「国の存立にとって重要な情報」ではなく、単に「政権にとって都合が悪い情報」でしかないはずだ。
 私たちは過去に警察の捜査報償費・旅費を原資とした裏金問題や、外務省の外交機密費裏金に関して追及してきた。こうした市民オンブズマンの経験を踏まえ、情報公開の有用性を積極的に示し、秘密保全法を阻止しよう。

タイトル                        
資料1秘密保護法違反事件の刑事司法手続における秘密保護制度法令協議開示文書 H23.11
資料2・特別秘密の保護に関する法律案(仮称)の概要
・次期通常国会提出予定法案
・特別秘密の保護に関する法律(仮称)(素案)法令協議開示文書 H23.11
資料3秘密保全法制スケジュール法令協議開示文書 H23.9
資料4・逐条解説(案) ・用例集(案)・参照条文集(案)法令協議開示文書 H24.4 H24.5
資料5・内閣法制局資料持込み日程まとめ ・月別開示された枚数開示資料から作成
資料6内閣情報調査室と協議先の省庁 回数と日時分析開示資料から作成
資料7警察庁と内閣情報調査室のやり取り(サンプル)法令協議開示文書 H24.4
資料8適性評価制度と適格性確認制度との比較法令協議開示文書 H24.8
資料9日弁連等の主な指摘事項と本法における対応法令協議開示文書 H24.8
資料10■■■法令協議開示文書 H23.11
資料11内閣情報調査室が内閣法制局に提出した資料の項目一覧開示資料から作成

秘密保全法 法案制定過程の情報開示請求から見えてくるもの _d0011701_1633994.jpg

by beshi50 | 2013-08-19 16:30 | 他団体のお知らせ・資料 | Trackback | Comments(0)