陸上自衛隊情報保全隊事件 証人尋問レポート
2013年 05月 17日
差止訴訟の控訴審第4回口頭弁論で証人尋問に元陸上自衛隊情報保全隊長の
鈴木健氏が証言台に立ちました。
尋問を行った、中谷雄二弁護士(秘密保全法に反対する愛知の会 共同代表)
によるレポートです。
本訴訟については「自衛隊の国民監視差止訴訟を支援するブログ」を御覧ください。
http://blog.canpan.info/kanshi/
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5月13日に仙台高裁で開かれた情報保全隊事件の証人尋問に立ち
会ってきました。この日は、初めて情報保全隊長が証言に立つ日
です。一審で5人の原告に対して、賠償を命じられた国が一審での
一切証人を申請しないという態度を変更し、自ら申請した証人が
イラクへの自衛隊派遣に反対する一般市民を監視していた当時の
情報保全隊長を証人として申請したのです。原告側も一審以来、
証人として申請していたため、裁判所は、この証人の証言を認め
ました。しかし、国側は一般論は答えるが、具体的な活動や組織
などは公務の秘密に該当するとして、答えないことを明言してい
ました。裁判所は、防衛大臣に原告側尋問について、証言を許す
かどうかの照会をし、防衛大臣から具体的な活動については証言
が許されないという回答が来ました。それを踏まえて、原告側が
提出した尋問事項の大部分を裁判所が認めて開かれたのが、この
日の尋問でした。
情報保全隊長というこれまで陰に隠れて明らかでなかった部隊の
隊長が公開法廷で証言することは初めて、自衛隊の元幹部が自衛隊
の活動について証言するということは、最近にはないことです。
その意味でも注目されていましたが、「一般論しか答えない。具体的
な活動等は守秘義務として答えない」ことを明言して始まった尋問
です。裁判所からは情報保全隊活動の報告書の成立や存在を前提と
した質問は禁止すると言われた上での尋問です。当初から難しさは
予想されましたが、その予想を上回る大変な法廷でした。
情報保全隊の報告文書について、文書を見たことがあるかという
質問に対して、証言を拒絶し、裁判所から「私文書か公文書か不明
であるが、これを見たことがあるかというだけの質問だから守秘義務
に反しない」という説明があった後も、具体的な活動に関する質問
だからとして、証言を拒絶しました。ついに国側指定代理人が「私文
書か公文書か」という前提が理解出来ていないので、協議させて欲しい
と言って、休廷。休廷後、「私文書であれば見たこと無し、公文書で
あれば、公務の秘密を害するので、証言を拒絶する」と答えました。
その後の質問も、具体的な事項にわたる証言は公務の秘密を害
するとして一切、証言拒否、一般論として聞いたのに対して、国側代
理人から、一般論といいながら具体的事項だという異議、完全な
一般論については、「あまりにも一般論すぎて答えられない」と
いう異議など、国としては主尋問で情報保全隊の活動の必要性、
正当性を証言した後は、反対尋問には答えないという姿勢で臨んで
いることが明らかな尋問でした。
このような中で、一つ一つ反対尋問に答えさせるよう裁判所に
迫りながら、裁判所が認めたことや裁判所が要約した質問だけに
答えたのが、報道された証言内容です。
午後1時半から午後4時40分頃まで途中、3回の休廷を含みなが
らの緊迫した尋問でした。
尋問を担当した仙台の弁護団の準備は周到で、極めて困難な条件
でありながら、一般論という前提で、情報保全隊が一般市民の活動
をほとんど無限定とも言えるほど監視していたことを浮き彫りにし
てくれました。しかも、主に尋問を担当した弁護士がまだ弁護士2
年目でありながら、予想外の事態にも落ち着いて対応していたのが
印象に残りました。すばらしい尋問だったと思います。
札幌の佐藤博文さんや私も証言態度のひどさにキチンと答え
させろと迫り、佐藤さんの「司法がこけにされている」との発言を
受けて、休廷。休廷後は、裁判官が慎重な言い回しながら、一般論
としての質問だから答えるように促し、証人も渋々答えざるを得ない
展開となりました。私の発言には、被告代理人から「語気がするど
すぎる」という訳の分からない異議まででました。「反対尋問だか
ら語気がするどいのは当たり前だ」とやり返しましたが、単に座っ
ているだけでなく少しは参加できたかと思います。
それにしてもこの日の証言は出てくる答えが驚くことばかりで
す。
労働組合の春闘の街宣も監視対象になりうる。イラクの被害実態
を表す写真展も監視対象になりうる。公開の集会、デモ行進は監視
対象になりうるなどと一般市民を日常的に監視対象にしていること
に驚きと怒りを感じました。
まだ、予定された尋問事項の3分の1程度しか終わっていません。
次回で終わるとは思えない展開です。権力による市民の監視が裁か
れるこの訴訟は、私たちの秘密保全法に反対する運動にとっても、
極めて重要な意味があります。秘密保全法が制定されなくても、
秘密探知を理由に監視対象にされている市民が、秘密保全法が制定
されれば大っぴらに監視されるでしょう。そして、法律で特定秘密
が認められれば、裁判が裁判でなくなることを実例で示しているの
が、この日の証言です。
今後も注視していかなければなりません。次回以降の法廷にも参加
してきます。
とりあえずの報告です。
なお、この法廷には沖縄から小林武先生も参加されていました。
2013年5月15日
中谷雄二
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2013/5/13 秘密保全法に反対する愛知の会
一般市民も監視の対象 元陸上自衛隊情報保全隊長が裁判証言で認める
http://nohimityu.exblog.jp/20174328/