選挙結果と秘密保全法制定の危険性
2012年 12月 21日
「秘密保全法に反対する愛知の会」共同代表の中谷雄二弁護士が、
「選挙結果と秘密保全法制定の危険性」という論考を書きました。
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選挙結果と秘密保全法制定の危険性
「秘密保全法に反対する愛知の会」共同代表 弁護士 中谷雄二
総選挙の結果、改憲を主張する勢力が、衆議院で3分の2を超えることとなった。憲法改正の発議は、衆参両院の3分の2の賛成で発議できることとなっているため、その要件を衆議院で満たす可能性がでてきたということである。自民党は野党時代から議員立法で国家安全保障基本法を制定し、集団的自衛権の行使を可能にする法律を制定する準備を整えてきた。議員立法とすることで、これまで積み重ねてきた内閣法制局の憲法解釈を迂回し、法律により憲法の解釈を変えようという動きである。今回の選挙結果は、この動きを加速するだろう。自衛隊を国防軍にと声高に訴えていた自民党が圧倒的に多数を握ったのだから、わが国の軍事国家化が促進される危険性がある。勿論、この結果は、民意を歪める小選挙区制によるものであるが、選挙結果を大義名分として、一層の軍事国家へと向かうことが懸念される。大手を振って軍事的必要性が語られる国は、その反面において、国民の人権を侵害することはこれまでの歴史が教えるところである。中でも民主党政権で制定されようとしていた秘密保全法は、以前の自公政権時代から準備されていた法律であり、制定の最大の動機が軍事的な必要性にあると思われるだけに、新たな政権の発足後、一気に法律が制定される恐れすらなしとしない。この国会の構成を考えれば、一旦、国会に上程されれば、ほとんど議論無く通過する可能性すらある。適格審査の名の下に公務員だけでなく、その家族や友人まで詳細なプライバシーを調査され、他方で国が秘密としたものを探る行為に重罰を科する法律は、報道を萎縮させ、わが国の自由な表現や情報の流通を阻害することになる。その結果は、国民の人権を侵害し、わが国の民主主義の基盤を掘り崩す。日本弁護士連合会は会長声明を上げ、中部弁護士連合会は反対の大会決議を行った。愛知県弁護士会も会長声明で秘密保全法の制定に強く反対している。
秘密保全法に反対する愛知の会は、今年4月の結成以来、定期的な街頭宣伝、学習会の開催、ブログでの情報の提供、ニュースの発行と市民に広く秘密保全法の危険性を知らせる活動をおこなってきた。今回の選挙結果は、秘密保全法の危険性を広く市民に訴え、国会への上程をさせない広範な運動を起こさなければならないと決意を新たにさせられるものである。